ネパール料理を食べながら「奇書の世界史」について語る会

カトマンズキッチン(名古屋駅:ネパール料理)

過去の読書会の記録です。

 今回は読書会形式ということで、動画サイトで話題となった後、視聴者の中の方とのSNSつながりで出版に至った「奇書の世界史」を課題本とさせていただきました。今回の課題本には、魔女裁判を正当化した書籍、英国人が台湾人に扮して台湾についてのでたらめを書いた偽書、傷の患部に塗らずに武器に軟膏を塗ることで治療を行う武器軟膏、といった今となってはトンデモな偽書をはじめとした興味深い書籍群が紹介されています。
 参加いただいた皆様の感想の抜粋を以下に記します。

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*つまらない真実よりも面白い嘘の方が求められている限り、偽書はなくならないと思う。
*偽書ではなく、天動説など当時偽書扱いされた学説を取り上げた番外編の方が、わかりやすくて面白かった。
*「椿井文書」は偽書ではあるが、こうあってほしいという希望から今でも地域史に残っているという解説に納得した。もしかしたら、「古事記」などの神話にもそういった要素があるのかもしれない。
*「魔女に与える鉄槌」のせいで十万人もの冤罪の方が魔女裁判で殺されたかと思うと非常に腹立たしいが、権威をうまく利用するなど参考になる部分もある。
*傷口ではなく傷を与えた武器に軟膏を塗って治療する武器軟膏が真面目に信じられていた時代が信じられなかったが、この話を通して中世ヨーロッパの医療水準が非常に低かったことを知った。
*大正時代に野球が害毒と、まことしやかに書き立てられた新聞記事が存在することは驚きだったが、冷静に考えると当時の日本に集団スポーツはほとんどなかったような気がする。
*本書を読む前から偽書には興味があったので「ヴォイニッチ手稿」は興味を持っていた。暗号にはやはりロマンがある。
*イギリス人が台湾の習俗についてデタラメを描いた偽書、「台湾誌」の著者と批判者とのやりとりは現代の詐欺師とほぼ同じだと思った。
*ヴェルヌの「月世界旅行」を読んだ少年が科学者となって、最終的にはロケットを開発したという逸話は夢があって好き。
*スウィフトの「穏健な提案」は不穏で背徳的な印象を受けるが、「ガリヴァー旅行記」も今読み返すと似たような箇所が散見される。しかも、この作品よりもアイルランドの当時の実態がさらにひどかったと思うと考えさせられるものがある。
*レスボス島に関する偽のイメージを植え付けた偽書、「ビリティスの歌」には騙された。女性が書いたとしか思えない詩をわざわざ男性が書いていたと思うと、非常におかしい。また、作中に解読不能と注記した箇所を設けるあたりがうまいと思った。
*本書の前半部を大晦日に読んだ影響で、初夢で変な夢を見た。

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 本書の類書として偽書に関する研究書をお持ちいただいた方もおみえでした。

 本書で紹介されている書籍の内容自体は現代人にとっては無用の長物ですが、その成立背景を鑑みてみると、ネットに頼りきって知識を得ている現代人の我々の常識感の危うさを自覚できる有用な書籍だと思います。

 さて、そろそろ食べたもののお話も。今回の会場は名駅西口エリアのネパール料理店、「カトマンズキッチン 」。このエリアは現地仕様のネパール料理店が増加傾向で、名古屋駅から徒歩圏内にここを含めて少なくとも三件のお店が林立しています。付近のお店の特徴は、現地向けの定食料理(ターリー、ダルバート)が非常に安価で提供されていること(こちらのお店のベジターリーは590円)。おそらく、名駅エリアで600円台で満腹サイズの夕食がとれるお店は、チェーンのファストフード店を除きほとんどないと思います。
 今回注文した料理は以下の通りです。上述のターリーに加え、モモ(餃子)、チャウミン(焼きそば)といったネパールの定番メニューを中心に注文しました。タスセット(マトンフライとその付け合わせ)のジャガイモのカレー炒めは結構辛かったですが、その他の料理は比較的スパイス控えめで食べやすかったのではないでしょうか。お店は、我々以外はほぼネパール人の方ばかり。子供連れの方も多く非常にアットホームな雰囲気で、このお店が現地の皆様に愛されていることがうかがえました。
 
【注文した料理】

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フライドソーセージ

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スープモモ(ネパールの餃子)

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チキンチャウミン(ネパールの焼きそば)

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タスセット(マトン肉フライ、大豆炒め、ジャガイモのカレー炒め、プザ(ライスパフ)ジャガイモがかなり唐辛子きつめの味付けでした。)

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ターリーセット(ベジタブルターリー、ポークターリー、チキンターリーを注文しました。奥の真ん中のカレー以外は共通です。写真はベジタブルターリー。)

アフガニスタン料理を食べながら、辺境の怪書と歴史の驚書の読書会について語る会

アリアナ(車道:アフガニスタン料理)

過去の読書会の記録です。

課題本は、「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」。辺境探検家の高野秀行さんと、辺境に強い歴史学者の清水克行さんのお二人による異色の読書会形式の対談集となります。
 課題本の分厚さに何度も読了諦めようと思ったとか、読書会の後の飲み会が楽しすぎるとか、どこかの読書会サークルそのものじゃないかという後書きが印象的なこの作品、課題本は「大旅行記」を筆頭に辺境の歴史習俗や言語学に関する専門書が並びます。有志の方に作中の課題本を何冊か持ち寄っていただきましたが、圧巻のボリュームです。これを読了してからのマンツーマンの読書会、さぞや充実感があったことかと思います。
 今回皆様にアウトプットにいただいた内容の抜粋と課題本内に登場する読書会の課題本リストは以下となります。

[アウトプット概要]
*こんなに立派な人たちでも、後書きで課題本の読了に苦しんで何度も読書会を諦めようと思ったと書いていることに共感した。
*2人だけの読書会は、会話のターンが多いので非常に大変な反面、充実感も大きいだろうと思った。

*権力者に支配させないため、あえて連絡手段を持たない戦略があるというのには驚いた。
*支配者が搾取する手段としてコメが極めて有用な作物であるという視点は非常に新鮮だった。
*「タイムスクープハンター」は権力者に偏らない視点で歴史を語っており好きだったが、清水克行さんが時代考証を担当していたと聞いて驚いた。
*怠けるという概念には懈怠(けたい)と懶惰(らんだ)があり、夏休みの宿題を7月のうちにやってしまうような人間は懶惰であり、決して「勤勉」ではないという考え方があるのに驚いた。仕事中でもこの言葉を使ってみたいと思った。
*義経は実際にはかなり粗暴な人間だったことを知ったが、弁慶とキャラが被るので大河ドラマ等で美男子の設定になっていることを知り、刷り込みは怖いなと思った。
*蝦夷(関東以北に住んでいた人々)の歴史はほとんど語られていないので、「将門記」を興味深く読んだ。
*今日のことしか考えないビタハンの考え方は自分に近いと思った。
*ビタハンのあるがまま捉える考え方は、禅の考え方に近いかもしれない。
*子供を大切にする西洋の考えが普遍的だと思っていたので、必ずしも子供を重要視しないビタハンのような考え方があるのに驚いた。
*ビタハンも興味深いが、年末にNHKで放送されていた「最後のイゾラド」に会ってみたい。

*厚すぎて無理だと思うが「大旅行記」はいつか読んでみたい。
*うまくまとめられないが、この本を読んで「辺境」とは何だと考え込んでしまった。

[課題本リスト]
『ゾミア』https://bookmeter.com/books/7279699
『世界史のなかの戦国日本』https://bookmeter.com/books/4726397
『大旅行記』全8巻https://bookmeter.com/books/233600
『将門記』https://bookmeter.com/books/2566867
『ギケイキ』https://bookmeter.com/books/12879796
『ピダハン』https://bookmeter.com/books/4644905
『列島創世記』https://bookmeter.com/books/514851
『日本語スタンダードの歴史』https://bookmeter.com/books/6749147

 普遍的だと思っていたものが普遍的ではなかったことを知ったなど、物の見方を考えさせられたという感想が多かったかと思います。

 今回の会場は貴重なアフガニスタン料理を気軽に食べられるアリアナレストランを選定させていただきました。こちらのお店は、ランチだとカレーがメインになりますが、夜はなかなかお目にかかれないアフガニスタン、イラン料理が食べられます。また、店員さんは日本語が非常に達者です。
 注文した料理は下記の通り、

アリアナサラダ(店名が冠されたボリューミーなサラダ)
ボラニ(アフガニスタンのお好み焼き)
マントゥ(アフガン風蒸し餃子)
ボラニポンジョン(揚げナスのトマトソース煮)
タンドリーセット
カブリパラウ(アフガニスタンの炊き込みご飯)
ゼレシュクパラウ(サフランライスの炊き込みご飯)
ダルマカハニ(4種のひよこ豆のカレー)

お肉メインの構成でしたが、現地の蒸し餃子やお好み焼きに似た料理もあり、ボリュミーかつスパイスは穏やか目で非常に好評でした。

ネパール料理を食べながら謎のアジア納豆について語る会 レポート

Nepal STATION(伏見:ネパール料理)

過去の読書会記録です。

著者は、早稲田大探検部出身の高野秀行氏。これまでも今後の奥地に生息するという謎の幻獣を探したり、麻薬トライアングル地帯に乗り込んだり、イスラム圏で禁忌のアルコールを探し求めたりと、世界各国問わずに冒険されている様子を面白おかしく書いた書籍を多数出版されています。
 今回の課題本、「謎のアジア納豆―そして帰ってきた<日本納豆>―」は、日本人が日本独自の文化だと誤解している納豆に関する食文化について、アジアの様々な場所で独自に発達した多様な納豆を追い求め、得られた情報や現物の分析結果を元にその関係性についても考察を図った作品です。

 今回は12名の方にご参加頂き、様々な観点からアウトプットいただきました。

*東アジアでは納豆はご飯の付け合わせでなく、調味料として使用されているのが興味深かった。
*東アジア地域の人たちは旨味を好むので、山間部は大豆、海沿いは魚を使ってアミノ酸豊富な調味料を作っているのが理解できた。
*東アジア地域以外だと旨味という概念がないので、インドや中東は食文化が大きく異なる。スパイスや酸味で味をつけている。
*煎餅状の納豆の見た目のインパクトが大きかった。味のイメージがつかないので食べて見たい。
*日本の納豆が糸引きすぎというのは同感。時々、購入した納豆が糸を引きすぎて驚くことがある。
*ミャンマーで味噌汁と海苔とご飯という和食としか思えない取り合わせの料理があったのが非常に興味深かった。
*葉っぱや条件を変えて納豆を試作している様子が興味深かった。納豆が二日でできるのは知らなかった。明日、自宅で作ってみようと思う。
*自然界でどこにでも納豆菌がいるのは知らなかった。
*日本の中でも地域によって食文化に大きな違いがある。お雑煮がない地方があるのにびっくりした。
*日本への納豆の伝来の歴史があまり分かっていないのが意外だった。雪納豆など、そもそも間違って伝わってしまっている事象もあったし。
*日本人でも納豆の付け合わせに色々多様性があるのが面白い(卵、ネギ、ツナ、鰹節、キムチなど)
*マド(納豆大好きな著者の飼い犬)が超かわいい。
*著者の行動力と分析力が半端ない。この人の他の作品も読みたくなった。

 この本の主テーマのアジア各国の食文化の奥深さだけでなく、日本の食文化についてもまだまだ知らないことが多いことを実感しました。

 今回の会場には丸の内の”ネパールステーション”を選定しました。名古屋に点在するネパール料理店の中でも屈指のメニュー数を誇るこちらのお店で、課題本にちなんでお豆料理を中心にネパール料理を堪能しました。
 シロップに漬け込まれた激甘のスイーツや鮮烈な辛さのお肉料理など、和食と明らかに異なる味付けの料理もありました。一方、稲や小麦を育てるのが難しいネパール山間部でカレーの付け合わせの主食で食べられているディード。こちらは蕎麦がきそのものであり、こんなとこにも日本の食文化との共通点が見受けられるのが非常に興味深かったです。

[注文した料理]
*ネパールサラダ
*グンドゥルク(発酵野菜と豆の和え物。)
*大豆のスパイス和え(結構辛かったです。)
*チャナアンドフライ(ヒヨコマメと卵の炒め物)
*ネワリサマエバジセット(干し飯、生姜、大豆、緑豆、青菜炒め、スパイシージャガイモ和え、漬物、マトンのスパイス和え、豆のパンケーキ、揚げ小魚、ネパール風湯卵のセット)
*スチームモモ(羊肉の蒸し餃子)
*ベジモモ(野菜の蒸し餃子)
*マトンカレー(羊肉のカレー)
*ポークセクワ(豚肉の串焼き)
*クワティカレー(発芽ミックス豆のカレー)
*ディード(蕎麦粉を練った蕎麦がき。ネパール山間部の主食です。)
*バスマティライス
*ラスバリ(カッテージチーズの団子のシロップ漬け。激甘)

各国料理を食べながら、アフリカにバッタを倒しに行った男について語る会

過去に開催した異国料理を食べながらの読書会です。

カフェ クロスロード(ささしまライブ駅:各国料理)

“美味しい各国料理を食べながら、アフリカにバッタを倒しに行った男について語る会”、略してバッタ会を開催しました。
 課題本 “バッタを倒しにアフリカへ”は、生物系若手研究者の手記という非常にマニアックな題材ながら、著者のやや自虐的なパフォーマンスと真面目な研究内容のギャップの凄まじさが理系以外の方の心も捉えて、見事に本年度の新書大賞を受賞し累計発行部数が20万部を超えています。

 著者は、ファーブルに憧れて昆虫学者を目指して博士課程を卒業してポスドクの道を歩み出します。ただ、研究対象に日本に生息していないサバクトビバッタを選択したとこともあり、なかなか大学の正規ポストを得ることができません。
そんな中、一発逆転を期して著者が選んだのがアフリカのモーリタニアでの研究生活。本作では、先進国の研究者が皆無の当地での破天荒な日常生活とバッタの研究、そして次のポストの為の就職活動の模様が綴られています。
 今回は11名の方にご参加頂きましたが、理系の方はもちろん文系の方からも著者の生き様について、多様な意見を出していただきました。

*研究テーマを選ぶ場合、できるだけ楽に多数のデータを集めるために実験対象は容易に入手でき、繁殖にも手間がかからない生物を選ぶのが常套手段。この著者はそもそも、実験対象に日本で生育していないサバクトビバッタを選んだ時点から覚悟が違う。(実験対象にしにくい動物の例としては例えば、クマが挙げられる。繁殖もしずらく、飼育に危険が伴い、野生環境での個体数も減少傾向)
*理系の若手研究者(ポスドク)の大変さがよく理解できた。弟が同じような境遇だがほとんど24時間研究して何とか頑張っている。もう少し大事にしてあげようと思った。
*著者の別の本(孤独なバッタが群れる時)を読んで、ちゃんと著者が真面目に研究していることを知って安心した。
*ニコニコ動画のようなメディアをうまく活用している所がすごい。理系研究者は真面目だが、わかりやすく自分のすごさを表現できる人は少ない。この著者はアピール力がすごい。
*この著者は、ポスドクの中では明らかに成功者。著者の陰で何百人のポスドクが夢敗れて別の道を歩むことを余儀なくされている。
*本気で一つの物事を突き詰めてタイミングを見誤らなかった方には、道が開けると感じた。学生時代にお世話になった教授も若い頃は似たような経験をしていたそうで、同じような境遇の若者に恩返しがしたいという話をされていた。
*一般的な日本人が捉えているイナゴとバッタの概念が逆なことに衝撃を受けた。
*裏ヤギ(お世話になった人にお礼としてヤギ1匹丸ごと提供)に代表されるように、海外で人を動かすには工夫が必要。同じ釜の飯を食うというのは、コミュニケーションの基本だと思う。お金に相当するものは高くても安くてもダメだし、やってくれたら大袈裟に喜んでお礼を言うのも必要。

 この他にも、昆虫採集、雅楽、図書分類等々、いろんなの方面の話で盛り上がり、皆さんの興味関心の広さが伺えました。

 今回会場に使ったのはJICA中部1Fのカフェ クロスロード。世界各国の料理がお手頃価格で楽しめるこのカフェは、JICAの海外研修員の方の食堂も兼ねています。日本向けにアレンジされたメニューもありましたが、名古屋では中々食べられないアフリカ諸国のメニューも多く取り揃えられており、ご参加の皆様に大変好評でした。聞きなれないメニューには関連のリンクを貼っておきましたので、ご興味ある方は参照ください。

ボボティー(南アフリカ カレー味のミートローフ)
http://e-food.jp/recipe/boboti.html
ドロワット(エチオピア チキンのカレー風煮込み)
http://africook.blog.fc2.com/blog-entry-34.html
ルンダン(インドネシア 牛肉のココナッツ煮込み)
https://ameblo.jp/tidur-tiduran/entry-11193563794.html
ピンカイ(ラオス 焼き鳥)
https://kellysiewcooks.com/2014/06/10/aff-indochina-ping-kai-laotian-grilled-chicken/
コシーニャ(ブラジル 鶏肉のコロッケ )
http://www.potatoairlines.com/potato_dishes/brazil_01.html
リングイッサ(ブラジル 極太ソーセージ)
マトンケバブ(アフガニスタン)
チョリソーオーブン焼き(メキシコ)
タイ風オムレツ
モロッコ風色々豆サラダ